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活動実績

ついんくる★★講座2015 第6回 テーマ:ASDのひとたちへの性教育

12月12日(土)えーるピア久留米にて、第6回目のついんくる講座を開催いたしましたので、その内容をご紹介いたします。

第6回目の講師は、
NPO法人それいゆ佐賀地域支援センター
センター長 野間康美先生。

テーマ:ASDのひとたちへの性教育

「それいゆ」といいますと、訓練を受けるのも何年待ちという、全国的にも非常に有名な療育機関です。
そのセンター長であられます野間先生から、大変貴重な性教育のお話を聞くことができました。
野間先生は、教育学修士・臨床発達心理士・それからESDM(Early Start Denver Model)公式セラピストでもいらっしゃいます。

講義の内容は、
★なぜ性教育が必要か?
★性教育の基盤となるもの
★支援例
★まとめ

まずはASD(自閉症スペクトラム)の特性から
ASDの人は、脳のつくりが違うため、情報処理や受け止め方が違ったり、抽象的なことが苦手だったり、全体像をとらえることや概念の理解が困難だったりします。
表情や場の雰囲気を読み取ることや、変更への対応が難しいこともあります。
発達のアンバランスさがあるので、その人のばらつきを認め、その上で対応していくことが必要です。

【基盤となるもの】
まずは「大人の姿勢」です。
性のめばえは成長のあかしであり、健やかに育っているという証拠。
子どもの成長を受け止め、ボジティブに。否定しないことが大事です。
そして子ども扱いしないこと(年齢相応)。
例えば学校で、高校生に異性の体に触れる遊びを教えたり、手をつないだりする行為は
“不適切な性的行動を教えているのと同じ”だと言われていました。

「健やかな性を育てるために」
小さい頃から、相談するスキルを育てること。親以外に信頼できる相談相手を作っておくことや、スケジュール、感情の勉強をあえて視覚化して教えておくことが大事だそうです。

「伝え方(ASDの特性を考慮)」
本人に分かるように、本人に合った方法で伝えます。
”知らない“は不適切な行動につながります。小さい頃は抱きついてもOKでしたが、大人がしたら犯罪です。幼稚園→小学生→中学生→高校生→社会人と年齢ごとに知識の更新が必要になってきます。ASDの人は「自動的に」更新できないからです。

【支援例】それいゆでの取り組み
幼児期では
スケジュールやコミュニケーション、男女の違い(お父さんは男・妹は女等)、公共の場でのふるまい方などを年齢相応に、ポジティブに教えていきます。

学齢期(低学年)になると、
男の子と女の子の違いや、プライベートゾーン(水着で隠れる場所)や安心できる距離を教えます。それと同時に、病気になった時や大浴場など、“見せてもいい時”も教えていきます。

それから中学年、高学年では、
プライベートゾーンの復習、体の変化、体の名前、いいことやいけないこと(言葉・行動)、パーソナルスペース(小さい頃とは違うので、もう一回確認)、異性と一緒にいる時のマナー(具体的に=体を1秒以上見ない、体を触らない等)や、話していい人も伝えます。

それから必要に応じて、
・夢精のときの対処方法
・マスタベーションについて
・自分を守る
・異性との付き合い方
・恋愛スキル
・触法について 教えていくのだそうです。

最後に野間先生は
・「個別化」(伝えるタイミングや伝え方)を忘れないで
・「知らない」を作らない(不適切な行動は本人の不利益につながる)
・豊かに生きていくために(性欲は大事)
・社会の一員として(どんなに他の人と違ってもいい)
とまとめられました。

質疑応答では、
「子ども(男)が寝る時に、布団の中で全裸になって触っていることがある。それを親がわざわざ手順を教えるのかどうか」という質問がありました。
それに対して先生は、
「紙芝居や絵本など、本人に分かりやすい方法で “こういう形で触るのはOKだよ”と
教えるのと同時に、お父さんと(同性)が「身体プロンプト」でやり方を教えるのがいいのではないか」と回答されていました。
本人に合った教え方というところが重要で、体に触れられるのを嫌がる子には「モデリング」で教えることもあるそうです。

質疑応答のあと
“自分が教えることに嫌悪感がある人は、ネガティブな感情が伝わってしまうため、他の人に委ねた方がいい“とも付け加えられました。

アンケートには、
・ASDの特性による、起こりやすい失敗と、そうならないための方法がよくわかりました。思春期から考えるべきことかなと思っていましたが、小さいうちから気をつけることがたくさんあると知ることができました。
・小さいころから男の子と女の子の違いや下ネタを言った時に“ダメ”の一言でなく、しっかりポジティブに伝えていく事の大切さを知ることができました。“知らない”を作らないようにしたいと思います。
といったご感想をいただきました。

今回も沢山のご参加ありがとうございました。
文責:松尾博子