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ついんくる★★講座2015 第5回 テーマ:合理的配慮ってなんだろう?
H27年11月14日(土)えーるピア久留米にて、第5回目のついんくる講座を開催いたしましたので、その内容をご紹介いたします。
昨年、国連の障害者権利条約が批准され、いよいよ来年4月より「障害者差別解消法」が施行されます。
第5回目の講師は、
幼児教育研究所 所長の福田康先生。
テーマ:合理的配慮ってなんだろう?
福田先生は、昭和58年に高良内小学校に教諭として就任され、その後数十年にわたり久留米市内の小学校で教鞭をとられました。
平成20年には2年間、福岡県からの派遣として、鳴門教育大学大学院特別支援教育専攻を終了。教育学修士を取得されています。
講義の内容は、
★障害のとらえ方
★条例・法令の動向
★合理的配慮と基礎的環境整備
★評価の重要性(アセスメント)
★合理的配慮に関する色々な情報
★具体例
まず、【障害のとらえ方】についてです。
2000年頃までは、「医学モデル」といわれる“本人の障害に問題がある”という考え方でした。
それが2001年以降は、「相互作用モデル」(医学モデル+社会的要因)
“環境を変えることで障害が障害でなくなる=社会環境の方に問題がある”といった考え方になり、障害のとらえ方が大きく変わりました。
【障害者権利条約】
日本は、H19年9月に国連「障害者の権利条約」に署名しました。
その後、障害者基本法の改正、障害者差別解消法、学校教育法施行令の一部改正など、国内法の整備が整い、昨年1月に国連「障害者の権利条約」が批准されました。
【個別の教育支援計画】【個別の指導計画】
特別支援学校・特別支援学級では毎年(もしくは学期ごと)作成されているものです。
文部科学省のHPには、
“設置者及び学校と本人及び保護者により、個別の教育支援計画を作成する中で、発達の段階を考慮しつつ、「合理的配慮」の観点を踏まえ、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましく、その内容を個別の教育支援計画に明記することが望ましい。また、個別の指導計画にも活用されることが望ましい。”と記載されています。
下記参照↓↓↓
http://www.mext.go.jp/…/ch…/chukyo3/siryo/attach/1325887.htm
ですが実際には、今回の講座に参加している保護者の中で、個別の教育支援計画・指導計画を見たことがあるという人は、わずか1割でした。
質疑応答では、この「合理的配慮」を学校の先生方はご存じなのか?という質問が、圧倒的に多かったようです。
それに対して福田先生は、「4・5月の校長会で、法制度スタートの話があっている。ただ、タイムラグがかなりあるのではないか」と回答されていました。
合理的配慮とは、
★他の子ども達と同じスタートラインに立つために、すでにある環境や条件に対して、子どもの特性に合わせた「変化」をつけること
★学校の先生の厚意ではなく、子どもの権利
★「前例がない、特別扱いできない、管理の問題がある」と断られていたことが、配慮しないと法律違反となる可能性がある。
★合理的配慮の不提供は差別になる
ということが分かりました。
ただし、均衡を失したまたは過度の負担を課さないもの
社会的障壁の除去をしてほしいという意思表明のあったもの
とされていますので、
“申し出ないと義務が発生しない”ことを、覚えておきたいと思います。
その他、
「久留米市は、条例をつくっていくような動きがあるのか」という質問には、
参加されていた、久留米市障害者福祉課の方からお答えいただきました。
“来月、「久留米市障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(原案)」を久留米市のHPに掲載し、パブリックコメントを募集する“ということでした。
最後に福田先生は、
「合理的配慮は新しい概念で、学校、行政、本人、保護者双方で情報が不足している。
みんなで力を合わせて、話し合いを持ちながらこの制度を育て、より良い社会をつくっていくことが大切」と、まとめられました。
アンケートには、
・来年度、小学校入学を控え、学校にお願いしたいことが沢山あるものの、それを全部お願いしてもよいものかと正直悩んでおりましたが、合理的配慮という点で考えると、私の思いは全て一度伝えてみようと思いました。法律で守られるという安心感がもてました(保護者)。
・まだ社会でも教育現場でも、「障害者差別解消法」についての認識が薄い気がします。少しでも知識を得て、個々の子ども達のためになる「何か」ができるようになればと思います(教育関係者)。
といったご意見がありました。
講義後のグループワークでは、「合理的配慮」について意見交換をし、2つのグループから発表がありました。
①つ目は、
子どもの特性や課題を、学校や家庭が連携した上で共通理解し、個別の教育支援計画、指導計画を作り込むことが、本人にとっての合理的配慮になるのではないか
②つ目は行政の方より
「学校に入る時はこういった補助がある」等様々な情報は、自分で調べたり人づてで聞くことが多いという話を聞き、分かりやすい情報提供をしていくことが合理的配慮になるのではないか
といったお話がありました。
講座の後の反省会では、スタッフの中から
「今日の講義を、今日の1回で終わらせるのはもったいない。もう一度同じ講座を開くか、福田先生に、スライドを持って市内の各学校を回ってほしい。」といった意見も出ていました。
今年度、ついんくる講座開催にあたり、差別解消法の中でも重要なキーワードがこの「合理的配慮」であり、私たちが最も伝えていきたいと思ったテーマでした。
「差別」といいますと、大変とげとげしいイメージがありますが、前回のグループワークでも、発達障害の理解がないために、無意識に行われている事例が多く出ていたように思います。
今回はいつものアンケートとは別に、参加者のみなさんに「生活の中での差別事例調査シート」を書いていただきました。
その中には、私たちが見て悲しくなるような実態が、いくつも書かれていました。
いつか機会があればまた、そちらの方もお知らせできればと思います。
文責:松尾博子