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活動実績

ドキュメンタリー映画「道草」上映会&シンポジウム 終了報告です

令和元年9月22日(日)えーるピアにて、ドキュメンタリー映画「道草」上映会&シンポジウムを開催しました。台風17号の接近で多くのイベント中止が発表される中、開催すべきどうか主催者として頭の痛い選択でしたが、久留米市シティプラザグランドホールで行われる「サンドイッチマンライブツアー2019」は開催とのことで、サンドがやるならゴコチもやる!ということで開催に踏み切りました(ライバルか!笑)

えーるピア久留米視聴覚ホールには、ほぼ申し込み通り、170名あまりの方にご来場いただきました。
上映に先立ち、gocochi-Next代表の松尾博子がこの上映会&シンポへの想いを自分のストーリーを重ねて語り、場内は共感と若干重めの空気に包まれながら?上映会がスタートしました。

2014年の重度訪問介護制度の対象拡大により、重度の知的・精神障害者もヘルパー付きのひとり暮らしができる可能性が広まりました。映画は東京の街角で介護者付きのひとり暮らしを送る知的障害者の人々を追い、介護者とのせめぎあいや、道草をしながら散歩する何気ない日常の姿などを通して、健常者と障害者がともにある街とは何かを問いかけます。…途中で会場内のあちこちのスマホから台風による災害緊急アラームが一斉に鳴り出すというハプニングもありましたが(汗)、場内は次第に映画に引き込まれていきました。

後半は「重度知的障害のある人の暮らしとまちの風景」というテーマでシンポジウムを行いました。それぞれのシンポジストが、映画で一番印象に残ったシーンに触れ、そのことについて語ることから始まりました。
シンポジストのおきなまさひと氏からは、重度障害者とヘルパーのユーモラスなやり取りのシーンで会場から笑いが起こったことについて「そのシーンを初めて観たとき正直、笑っていいのか(障害者の映画で)分からなかった…」と一般目線からの率直なコメントがありました。
また、同じくシンポジストの福島龍三郎氏からは、介護者の支援の在り方についての分かりやすくて深い解説がありました。
gocochi-Nextメンバーの柴田圭子は、保護者の目線から、本人が町にでることの困難さをリアルに語りました。
そして藤井誠氏からは、久留米市障害者支援の状況と強度行動障害の研修事業にかける思いについて話がありました。

途中、コーディネーターの加藤さよ子(gocochi-Next)から、会場に対して参加の呼びかけがあり、お隣の知らない人同士が映画についての感想をシェアし合うという場面がありました。(すかさずシンポジストのおきな氏が、某テレビ番組のシンキングタイムで使われるBGMを流して場を和ませていました)
会場からは、重度訪問介護の可能性、障害のある人たちの第3の居場所、障害のある子とともに育つ意味…本当に様々な意見が出て、シンポジウムを通して多くの意見を共有することができました。↓シンポジストのみなさんです

今、私たちgocochi-Nextでは、自閉症支援のスタンダードづくりを目指して、自閉スペクトラム症の人たちの「特性に合った必要な手立て」について共に学ぶため、「ついんくる講座」や「実践塾」を毎月開催しています。自閉症の人たちへの科学的なアプローチを広めることを目的としているところですが、同時に地域への問題提起も行いたいと思っています。
障害のある人が地域で暮らす権利について地域のみなさんと一緒に考える機会を持つことは、学習会を行って知識技術を高めることと同様に、とても大切なことだと考えています。それは2つの要素が相まってはじめて自閉症支援のスタンダードづくりにつながると思うからです。

とはいえ今回、ドキュメンタリー映画「道草」に出演された介護者さんたちは、私たちgocochi-Nextが目指す支援技術とは異なる部分はありましたけれど、障害のある人その人に対する深い理解と洞察、そして支援者と本人の関係性には学ぶことが多く、少なからず感銘を受けたことも付け加えたいと思います。

参加者への合理的配慮に関しましては、要約筆記・手話通訳・映画はバリアフリー字幕・音声ガイドに対応しました。
音声ガイドは、視覚障害がある方のため、映画の視覚情報をナレーションで説明するものです。視覚障害がある方は、本編に流れる音声しか楽しめず、音声のないシーンではどんな場面なのか理解しづらいという状況です。しかし、現在ではバリアフリー上映の取組みが進み、少しずつ広まってきています。
それから要約筆記のお申込みはありませんでしたが、7歳のお子さんへの手話を親御さんが希望されました。事前にそのことを手話通訳士さんに伝えると「お子さんに分かりやすい手話にしないといけないですね」と言われましたので、当日入られる手話通訳士さんお2人に、あらかじめDVDを見ていただいていました。
合理的配慮は、障害や配慮の必要な人のためにするのではなく、私たちが私たちの想いや活動を沢山の人に知っていただくために行うものだと考えています。
これからも、可能な限り“誰も排除しない”イベントを心がけていきたいです。

今回もまた、いろいろなことがありましたけれど、多くのみなさんのお力添えで、イベントを成功裏に終えることが出来ました。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。どうぞこれからもgocochi-Nextの活動を応援していただきますようお願いいたします。
2019年度久留米市障害者問題啓発事業、ドキュメンタリー映画「道草」上映会&シンポジウムの報告とさせていただきます。
文責:松尾和弥