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活動実績

ついんくる★★講座2022 第2回 テーマ:チャレンジング行動(Challenging Behavior)への支援にみんなで取り組もう

令和4年8月28日(日)ついんくる★★講座2022

第2回目の学習会を行いました。

講師は社会福祉法人はる 理事長  福島龍三郎先生

テーマは「チャレンジング行動(Challenging Behavior)への支援にみんなで取り組もう~困った人こそ、困っている人~」

福島先生は、佐賀市で20年間、主に知的障害・自閉症の方の地域生活支援に取り組んでおられます。また、個人としても「強度行動障害支援者養成研修」のプログラムやテキストの作成にも関わっておられます。今回は久留米の会場にお越しいただきました。

 

【講義内容】

〇書籍「チャレンジング行動~強度行動障害を深く理解するために」

日本では強度行動障害と言われることが多い。強度行動障害については、日本だけでなくどの国でも悩んでいる。試行錯誤をして、どうやって豊かな暮らしを作っていくか、どこの国も模索している。

日本では、ここ数年強度行動障害については色んな支援環境の整備が進んでいる。

〇チャレンジング行動(Challenging Behavior)という用語について

日本で使われることが多い「強度行動障害」という用語と同じような意味合いを持つと思われますが、必ずしも同義ではない。

「強度行動障害」は「障害」と付いているので、元々その方が持っている障害じゃないかと思われるが、あくまでも「状態像」である。また言葉そのものにインパクトがあるため、支援者の中でも「強度行動障害」と聞くだけで構えてしまったり、事業所の受け入れ側もハードルが上がる。保護者の中でも、自分の子どもが「強度行動障害」と言われることにとても抵抗感があると聞いたことがある。

「強度行動障害」は日本の中でも少しずつ認知度が広がってきていて、制度的にも充実してきている。

今回、「チャレンジング行動」という用語を用いたのは、チャレンジング行動という用語に込められた社会的な意味合いを知ってもらったり、考えてもらうことに意義があると考えた為だと冒頭でお話されました。

〇チャレンジング行動は本人・家族の問題ではなく、社会的な課題である。本人の行動が私たちが社会的に何とかしないといけない、そのような行動を出さなくてすむような環境を作らないといけない。そのチャレンジである。関わる人たち全てが解決に向けて、自分たちが出来ることをやっていくということが大事。

〇Challenging Behaviorとしての行動障害

・その行動をおこなう者としては、周囲から取り組んで(挑戦して)もらいたい行動

・支援者が取り組む(挑戦する)べき行動

〇「強度行動障害の評価基準等に関する調査について」H24年全日本手をつなぐ育成会

自傷、他傷、物壊し、騒がしさ、粗暴さ、パニックについては、周囲とのかかわりや対応によって学習してきた結果であると考えられる。これらの行動の多くが要求や注目、回避や拒否などのコミュニケーションの機能を有しているとみられ、幼児期からの補助代替手段を含めたコミュニケーションの獲得が望まれる。

→幼少期や学齢期の不適切な環境とかかわりが行動障害の発現に関わっている。

 

〇「PECS」「ABA」「TEACCHプログラム」

現在、自閉症の方たちに対して、エビデンスのある効果的なアプローチの方法。このスキルを身に付けることによってより良い支援ができる。強度行動障害の予防であったり、改善にも有効的。学びを深めていくと、ご本人のことが理解できるようになる。

 

〇組織や地域で取り組むことの大切さ

1人で奮闘しても行動障害のある人への支援はうまくいかない。同じ支援者や先生がずっと見ていくことが出来る訳ではない。自閉症の人たちへの支援は、統一した関りをすることが大事。周囲の人たちと協力しながらやっていく。

1事業所が頑張っても無理がある。地域で支えていく仕組みを作っていかないと、1事業所が疲弊してしまう。多機関で支えていく仕組みが必要。

 

〇つながりの大切さ。語り合える仲間が必要

【情報部分】

・強行支援はオーダーメイド、情報交換することで引き出し(バリエーション)が増える。

・チーム支援のための工夫(情報共有の方法やチームマネジメントの手法など)が支援現場では理論化できていない部分も多いので、語り合う中で工夫が共有されるケースも多い。

・事業所のルールに気づく(コーヒーを毎日飲める施設もあれば週末だけの施設もある。これってウチだけ!?に気づける)。

→実践を共有することで学びも大きい。

 

【メンタル部分】

・支援の難しさに関する共感(大変なのは自分だけでない)

・失敗の共有、失敗した支援を話せることで前向きに振り返るきっかけになる(自分がダメではない)

→「大変だった、失敗した」体験が仲間がいることでポジティブに。

→改善できなくても、今を支えていることにも大きな価値がある(支援を放棄していない)ことに気づく。

→理想と現実の「バランスポイント」を知るためには語り合うことが大切。

 

【理念部分】

・夢や理念の共有(ああしたい、こうしたいなど目標を言葉にできる)

→それぞれの現場で志を持ち続けることができる。

→地域の目標を共有することができる。

→語り合うことでチームを広げる。

 

大変な支援ほど、色んな人たちとつながって仲間を作って関わっていく、立ち向かっていく、チャレンジしていくということが大事である。

 

その他、「未学習」や「誤学習」、「虐待」、「氷山モデルの考え方」、「公衆衛生アプローチ」などのお話も聞くことができました。

 

参加者アンケートには、

〇強度行動障害の状態の子供を持つ保護者です。強行の子供を持つ保護者は生活のほぼ全てを子供に当てなくてはならず(学校や事業所への行きしぶりや拒否があり)学ぶ時間が持てません。学ぶ気力も持てません。 自閉症についての勉強会に参加しても内容を理解して実践していかないと将来大変なことになる、こういう感じになるという将来像を伝えてもらえることも少なかったです。 今日のお話は幼児期から学齢期、成人になるのにどういう支援をして 家族だけでなく学校・医療・福祉・行政と協力していくことの大切さも教えて頂きました。

〇当事者さんの近くにいる方々(支援者や保護者や家族)が障がいの特性やその対応に関することを学び、実際に行動することと、街ですれ違う一見何にも関係のなさそうな人々(地域の方々)が少しでも歩み寄ろう、理解しよう、ちょっとでもできることがあったら関わってみたいな、と思える土壌が両立出来たらどんなにかいいだろう、と障がい種に関係なくよく考えます。が、今日の福島先生のお話を聞いていても、実際にはスタッフさんにかかる負担の大きさ、課題の大きさ、時間のなさ、身分保障の低さ、等々課題は山積みなのが現状ですよね。現場が踏ん張りつつ、どのようにどこに働きかけ続けたらこの苦しい状況が改善されるのでしょう…。それでも孤立せず、繋がりを持ち、まずは自分の職場を組織として機能させることを念頭に置いて、私も出来ることから行動します。

といった感想をいただきました。

今回、「チャレンジング行動(Challenging Behavior)」という用語と意味合いについて、詳しく教えていただきました。強度行動障害の予防に関しては、子どもの頃から特性に合わせた療育や教育、支援をしていくこと。未学習や誤学習を防ぐこと。難しい行動が表れている人に関しては、適切な環境と支援を提供していくことによって、行動障害を軽減したり、本人のしんどさを軽減していくことを目指していく、ということを学びました。一個人ではなく、社会として、地域として取り組んでいくことの大事さも教えていただき、私たちgocochi-Nextも、活動していくことの意味や意義を考えるきっかけになりました。(福島先生に褒めていただきました。ありがとうございます。)

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次回のついんくる講座は、9月25日(日)10時~ テーマは「発達障害のある人が豊かに働くための支援」

九州産業大学の倉知延章先生にお願いしています。

「働く」がテーマですけれども、就労関係者以外の方にも幅広くご参加いただきたいと思います。沢山のお申込み、お待ちしています。

 

文責:松尾 博子