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活動実績

ついんくる★★講座2019 第4回 テーマ:特別支援教育のこれまでと最近の動向について

令和元年10月20日(日)第4回目のついんくる講座を開催しました。

テーマ:特別支援教育のこれまでと、最近の動向について~実践を支える特別支援教育の豆知識~
講 師:福田 康先生(久留米市立犬塚小学校長・日本LD学会・特別支援教育士)

講義内容:
〇特別支援教育に携わる人…教育以外の分野の知識も求められる(スペシャリストからジェネラリストへ)

【特別支援教育の歴史】
1878年(明治11年)盲・聾教育の始まり
1953年 文部次官通達「教育上特別な取り扱いを要する児童・生徒の判断基準」分離教育の法的根拠
1979年 養護学校義務化
1993年 通級による指導の規定・制度化
2007年 障害者権利条約署名 …

〇1979年の養護学校義務化は、1878年に盲聾教育が始まって約100年かかった。それまでは、就学猶予や就学免除の名のもと、障害児は教育を受けられないことが多かった。

〇特別支援学級を特殊学級と言っていた1970年頃、教師は言うことを聞かなかったり勉強しない生徒に対して、特殊学級の生徒を指して「勉強しないとあんなふうになるよ…」と、あからさまに言うことも珍しくなかった。しかし今はそういう教師はいなくなった。

【特別支援教育とは】
障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は
克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの

【この10年の変化】
〇教室…黒板上をすっきり、声の物差しの掲示、授業のユニバーサルデザイン(UD)・SSTという言葉の共通言語化 他
〇小学校…特別支援教育コーディネーターが位置づいた、特別支援教育支援員の大幅増 他
〇久留米特別支援学校…学校の名称が変わった(養護学校から改名)、新校舎使用開始、課題別研修の導入(ABA・構造化・ICT他)
〇久留米市…特別支援学校・特別支援学級・通級指導教室通級児童生徒大幅増、保育所特別支援保育支援員の大幅増 他

【ユニバーサルデザイン(UD)の視点とは】
「シンプル」・「クリア」・「ビジュアル」・「シェア」の4つ
UDの視点を生かした授業は、学習活動への参加と、学習内容の理解を保証します。
「全ての児童生徒にとって、分かりやすい授業」

【学習指導要領】
新しい小学校指導要領(障害のある児童への配慮についての事項)
〇通常の学級においても、発達障害を含む障害のある児童が在籍している可能性があることを前提に、全ての教科等において、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細やかな指導や支援ができるよう…
〇学習活動を行う場合に生じる困難さが異なることに留意し、個々の児童の困難さに応じた指導内容や指導方法を工夫することを、各教科等において示している。
〇例えば、国語科における配慮として、「拡大コピーしたものを用意」「分かち書きされたものを用意」
「自助具(スリット等)を活用する」「個別の指導計画を作成し、必要な配慮を記録し、翌年の担任等に引き継ぐ」

【連携】
複数の者(機関)が対等な立場に位置した上で同じ目的を持ち連絡を取り合いながら協力しあい
それぞれの者(機関の専門性)の役割を遂行すること(田中Y2009)
医療から学ぶ?-教育は教員が行うべきもの

【高等学校】
高校への進学率 98.8% ⇒ 高校進学はほぼ100%となった。
福岡県4校に通級指導教室が制度化された(筑後地区は明善高校に4名通う)
神奈川県では「インクルーシブ高校」が設置され、知的障害のある生徒が通う。パイロット校3校が、来年度は14校に広がる。

【専門性向上の課題】
〇ハウツーだけを学んでも、行動の問題が収まったところでストップする
〇ベースとなる知識・技術の不足 (ICFモデルの理解)
〇職場内で相談する人がいない
〇主体的な研修の場の必要性 他

【教育界に根強い「ふつう」至上主義】
〇いかに「ふつう」に近づけるか―子どもを苦しめている場合がある
〇努力すればできる、できない人はもっと努力をすべしー感情論ではない

【5つの目】
①虫の目-目の前の細部を見る目
②鳥の目-全体を俯瞰してみる目
③魚(さかな)の目―世の中の流れを読む目
④コウモリの目―物事を反対から見たり別の側面を見る目
そして、五つめの目は
⑤人の目―
・子どもの視点に立って理解しようとしているか。
・目の前の子どもから始める、その子にとってどうか(チルドレンファースト)の軸がぶれないでいるか。
・本人や保護者に寄り添う支援になっているか。
・寛容な社会を目指しているか。
・子どもたちに護られ大切にされているという感情を持たせているか。
・人権を守り、安心で安全な学校づくりを進めているか。

【参加者アンケートより】
〇息子が来年から1年生です。見通しが立たないことや変化が苦手で、来年からどうなるのか、息子は安心して通えるのか不安が大きかったのですが、現在の小学校の様子、先生方の変化を知ることができ、来年から親子共々頑張っていこうと思いました。(保護者)
〇福田先生のお人柄に救われる気がしました。(保護者)
〇教員になって11年目です。今まで何気なくしていたことを改めて振り返ることができました。特別支援を取り巻く環境は日々変化しており、教員も勉強し続ける必要性を感じました。(教育関係者)
〇歴史から最新の情報まで、他の研修では学べなかったこと、これから大切にしたいこと、沢山学べました。先生の声も聞き取りやすく、内容も分かりやすく伝えて下さり、内容も濃く、今日参加出来て本当に良かったです。今日知ったこと、学んだことを他の先生方とも共有したいと思います。(教育関係者)
〇ジェネラリストを目指したいと思います。(教育関係者)

【感想】
今回、福田先生はついんくる講座2回目のご登壇でした。前回は4年前、久留米市幼児教育研究所所長として「障害者差別解消法」が施行される前年の11月に、障害者権利条約のキーワードである「合理的配慮」を中心にご講演いただきました。
今回の講演の冒頭、福田先生は特別支援教育に携わる人は個別の支援・教育の視点だけでなく、社会の変化や世の中の流れを見ながら戦略的に特別支援教育の方向性を検討していく視点が必要ですと話されました。今回、子どもたちをめぐる様々な環境の変化について、先生からデータを用いての詳しい説明がありました。学校の変化、教室の変化、そして教育行政の変化・・・。支援者や教職員として、また保護者として、固定観念にとらわれず、子どもの思いに寄り添いながら、適切な支援を常に模索する姿勢の大切さを学ぶことができました。今回の講座には、特別支援教育に携わられている沢山の先生方が参加されていて、明るい希望の持てるついんくる講座となりました。

文責:松尾博子