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活動実績

【自閉症支援フォーラム】自閉症支援のNext Stage~実現したい未来を考える~ 終了報告です

9月30日(日)ホテルニュープラザ久留米にて開催しました自閉症支援フォーラムが、盛会のもと終了しましたことをご報告いたします。

台風24号の接近の中、来場される方に迷惑がかかるのではないか、開催するかどうか大変迷いましたが開催に踏み切り、結果250名もの方にご来場いただきました。ご来場いただいた皆様には心より御礼を申し上げます。なお、当日ご参加がかなわなかった皆様にも、フォーラムの内容が少しでもお伝えできればと思い一部になりますが報告させていただきます。

基調講演では、服巻智子先生に「TEACCHプログラムの原理と哲学」と題してご講演いただきました。今回の自閉症フォーラムの目的は、私たちgocochiが主催する「ついんくる★★講座」が今年4年目を迎えて、これまでの学習会で行ってきた様々な実践論とは一線を画す、私たちの支援の核となる部分のお話を多くの保護者や支援者のみなさんと共有したいというもので、どうしても服巻先生を久留米にお迎えしたかったのでした。初対面の服巻先生は台風の中にこやかに会場に到着されました。そして打ち合わせから久留米ラーメンや趣味の園芸のお話など、極度に緊張した私たちを和ませ、さすがの気遣いを心得られた大変チャーミングな方でした。

それでは講演の中で特に印象に残った点をいくつか紹介します。
◎親との協働→日本では親の協力や責任ばかりが強調される傾向がある。親とプロが協力しながら、それぞれの強みを活かして取り組むことが大事。=ジェネラリストモデル(それぞれが強みを活かして、1つのチームを作って包括的に取り組むこと。)

◎〜20世紀:自閉症は「ありのままで」生きていこう
21世紀〜:より社会とつながる形を目指そう、適応させていこう、という動きへ
→QOLの高い人生の支援の動き

◎教育/療育ではなく「介入」へ
介入=治療意図がある、但し治すという意図ではなく、より良い発達・人生のために

◎<QOLの向上>
臨床家がより高度な専門性を身につける!そして、クライアントに選ばれる時代。
保険適応が可能な時代に持っていかないといけない。

◎21世紀の自閉症支援>
EBPを軸に、スペクトラムに対応するための連携をして、治癒ではない介入でQOLを高めることが大切。
◎<社会的妥当性>
誰もが納得する目標と、手続きと、結果を!
例:うちの学校は専門家入れないので。→これは妥当じゃない!

さらには、今回のシンポジウムへのご提言として以下のようなご助言をいただきました。
Tier1:ASDのある人たちが存在することを受け入れ、環境調整をする。
大多数の人。テレビのキャラに自閉症の人が出てくるなど。
制度設計のベースを作るところ。
例:新オレンジプランのようなもの「認知症の人がいるのが当たり前の社会作りをする」
Tier2:特別支援を個別に提供するシステムができる
特別な支援がちょっと始まる。認知症見守りたい・認知症サポーター=ちょっと個別にサポートする。学校でいうと、通常学級にいる障害を持った子に「ちょっと気にかけてちょっと支援してくれる人」
Tier3:個々人への効果的な治療、支援の組み立て提供
特別な支援。→私たちは、another planetとして佐賀県で専門家として介入している。

私の感想としては、TEACCHが21世紀に新しく発展をし続けているということ。自閉症を持つ人たちが「ありのままで。いてくれるだけで…」という価値観から、より社会に適応していく取り組み(医療・療育でなく介入)にフェーズが変わっているということ(より本人のQOL重視の視点)など、いまなお大きな進化の途中である事に感銘を受けました。と同時に、今回のテーマNext Stageに向けた段階的(Tier1~)なアプローチの助言についても大変参考になりました。

 

さて、後半のセッションは、シンポジウム「自閉症支援のNext Stage」~実現したい未来を考える~でした。
地元久留米の3人のシンポジストと、コーディネーターにCOJ(コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン)の安谷屋貴子氏、助言者に服巻先生を加えたメンバーで行いました。

それそれの自己紹介の後、gocochi松尾和弥が「TEACCH」を取り入れてみて、子どもの変化に「ハッとした瞬間」を報告。その後会場の参加者からも発表していただき、気づきを共有しました。
その後、言語聴覚士の高山紀子先生より、自閉症支援の難しさや、どんな環境・地域だったら取り入れやすいかを発表していただきました。
また、「ひとりで取り組むことの難しさにはどんなものがありますか?」と会場へ投げかけると、通級指導教室に通う保護者、社会福祉法人の理事長よりコメントをいただきました。

最後に、私たちがイメージしているNext Stageとして
①FLat(対等)
②Link(つながる)
③Share(分かち合う)
という3つのキーワードをあげ、実現したい未来に向けて具体的な取り組みを伝えました。

そして、地域で活動しているMellicoreの國武ゆかりさんより「一人ではなくみんなと取り組んだからできた経験」を話してもらい、更に「地域のみんなで取り組むことの効果」を服巻先生にお聞きしました。

「場つくり」「学び」そして「伝える」。
それぞれが持つ知識・技術・価値観を周囲の人へ伝えていく。
独善でなく。共感とを持って。子どもを真ん中に。

フォーラム終了の主催者挨拶では、代表の松尾博子がコミュニティ・オーガナイジングの手法の一つである「パブリックナラティブ」を用いて会場の皆さんへNext Stageへの参加の呼びかけをしました。

今回の自閉症支援フォーラムのシンポジウムは、コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)へコーディネーターをお願いしました。
コミュニティ・オーガナイジングとは、「市民の力で社会を変えていこう」という手法・考え方です。

自閉症のある人の支援は、その人が行く場所・関わる人によって違っているのが現状です。その都度、自閉症の人たちは混乱し、不安を抱えてしまっています。それが原因で、不適切な行動につながったり、二次障害を起こす可能性もあります。
自閉症の人たちがどこへ行っても、誰と関わっても同じように適切な支援が受けられる。自閉症支援のスタンダードを作りたい。そんな想いで今回のイベントを企画しました。

これから、Next Stageへ向かって新しいチームで活動していく予定です。今後の具体的な活動内容はこれから話し合いを重ねていきます。
今後とも皆さまのご支援・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
文責:松尾和弥