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活動実績

ついんくる講座★★2018 第4回 テーマ:特別支援学級での取組

H30年12月15日(土) えーるピア久留米にて、今年度第4回目のついんくる★★講座を開催しました。
今回も保護者、教育関係者、福祉サービス事業所などから、約70名の参加がありました。

テーマ:「特別支援学級での取組」~学童期からの支援について 視覚支援を中心に~
講師:那珂川市立岩戸北小学校 教頭 朝倉博実先生
講師プロフィール:通常学級担任を13年経験の後、特別支援学級を13年担当。これまで、自閉症を始めとする様々な発達障害のある子どもたちと特別支援学級にて日々学習。現在は、小学校の教頭として勤務、通常学級に在籍している発達障害のある子どもたち及び、その周辺の子どもたちと保護者のサポートもしている。研修ではこれまで筑紫地区各小中学校、行橋市、豊前市、福津市等県内の各小学校、熊本など県外の小学校、保護者団体、PTA成人講座、NPO法人、大野城市同研、筑紫野市同研、社会福祉協議会、自主学習会等の講演会、授業研修会、福祉講座、人権・同和教育講座、子育て講座等にて、特別支援学級在籍児童だけでなく広く通常学級在籍児童について行動理論や学習理論、現場での実践について講話、指導助言、及び研修プログラムを実施。また平成23年9月に、第29回日本行動分析学会年次大会(早稲田大学)にて、論文発表を行う。平成25年7月第31回日本行動分析学会年次大会(岐阜大学)に参加。平成29年8月九州学校保健学会(久留米大学にシンポジストとして参加)。日本行動分析学会正会員。

―講義内容-

◆新聞記事と世の中の動き、一般的な認識
〇東京大学先端技術研究センター教授 中邑賢龍先生の提言・取組み
→日本人は「リノベーション」は得意。なぜ日本で「イノベーション」が起きないのか?
→読み書き苦手でも機器で補える 才能活かす教育を
→皆空気を読めたら変革は起きない 人は違っていい
→1期生270人 2期生にも問合せ多数
突き抜けた才能を持つ子どもたちの研究心を満たす教育の場がない
→大学には全教科に万能でなく偏っているのに世界レベルの研究者がいる
突き抜けた部分を伸ばし苦手部分は最新技術や他人とのシェアで
〇NHK発達障害プロジェクト
みんなで作る発達障害の「トリセツ」(監修:鳥取大学 井上雅彦教授)

◆子どもたちに対し、最初にすること
〇「君を絶対に傷つけない」と伝える(プライドを守る)
〇拒否を教える(しません・あなたは嫌です)
〇選択を教える→ストレスが減る→信用してもらえる
〇主訴を丁寧に→物事はこじれない
※失敗から学ぶ × (成功体験がふんだんにある人の話)

◆学校という組織
〇学校との関係づくり①
具体的な診断資料を揃える
関連書籍やインターネットで基礎的な知識を得る
親の会などについても調べ、連携がとれないか模索してみる
学校のシステムに子どもが合わせるのが前提。将来的にも環境に合わせるための練習と考える。10割でなく、5割で「良し」と考える。

〇学校との関係づくり②
担任との話し合い…子どもに関する資料をもとに(文書が必要)
担任が子どものことを把握できた段階で、共通認識をするという感覚で
多忙を極める職業なので、事前に日程の調整を図る
話し合いの参加者…可能な限り保護者が揃って行く
家庭で子どもの学校生活に対する共通認識を持つことが可能となり客観的になる
学校側の参加者は、担任・特支学級担任・特支教コーディネーターが中心。必要に応じて管理職が入ると話が早い。(管理職には決定権がある)
基本は先ず担任。いきなり上司にいかない。
学校へ依頼する時…一度に依頼するのは3~5項目程度
基本的には「家でできていること」を依頼
実現可能な課題を担任と共有する姿勢で

〇学校との関係づくり③
いじめ等の深刻なトラブルを見つけた時…先ずは担任に相談
実際に見聞きした内容・事実を話す
心身に危険が及ぶことが予想される時は、応急処置的に学校を休むことも必要
登校は選択肢の一つ。子ども自身の安全が最優先事項
子ども同士の問題は子ども、または親以外の第3者(教師)との間で解決させることが大人になった時の練習になる

〇学校との関係づくり④
基本的なスタンス…社会で生活するということは、子どもにとって良いことも悪いこともあるということ
子どもが大人になった時、このことを理解していることが決定的に重要になる
小学校はそのための練習の場(車社会にデビューするための自動車学校)
大けがしない程度に傷つくことを学ぶ場

◆特別支援学級について
〇生活単元学習(学習指導要領)
生活上の課題処理や問題解決のための一連の目的活動を組織的に経験させることによって、自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習する。児童の学習活動は、生活的な目標や課題にそって組織されるが、児童の取り組む一連の活動はすべて事前に組織されているわけではなく、生活の必然的な発展として展開されることもある。

→ 一体どんな意味?
領域や教科の内容を習得するために学習を行うのではなく(平仮名からとか、漢字
はこの順番とか)子どもにとって身近なもの
※例:ひらがなで「たいや」は世の中にない
「山」は読めないけど「久留米」は読める
「ドラエモソ」と書いていたら? → 「ン」を20回書かせる…×  「ドラえもん見るのね」…〇

◆特別支援学級でしてきたこと
〇調理に関すること(スウィートポテト・蒸しパン・クッキー・カップケーキetc…)
買物・調理・報告・収支が1パッケージ!
〇クラフトに関すること(カレンダー・お面・凧・ストラップ・バスボムetc…)
〇野菜の栽培に関すること(秋冬大根→青菜の漬物→販売→大根収穫→たくあん→販売→おにぎりパーティ)
〇乗り物利用に関すること(バス・西鉄電車・JR他)
〇レジャースキルに関すること(映画・ボウリング・太宰府遊園地・ミスド・マック他)
〇運動会に関すること(組体操練習・自閉症のある子ども)運動会当日を予測し対策
〇卒業式に関すること 卒業式練習→当日を予測し対策
〇長作文執筆に関すること 生活日記(間接体験)→卒業文集
〇自閉症理解に関する指導と家庭での支援

◆ホンモノに、ふれる…子どもが目を輝かせて前のめりになるとき
〇シャボン玉を飽きるほど飛ばしたとき
〇小さくなるまで凧を揚げたとき
〇自分の好きなものを自分で買えたとき
〇自分が稼いだお金で家族にお返ししたとき
〇自分が作ったもので家族が喜んだとき
〇自分の存在を家族がなくてはならないと認めたとき
〇自分の笑顔で家族が笑顔になったとき
(…この辺りの話はウルっときてしまいます)

◆おわりに
学童期は重要な時期といえますが、構えすぎてもいけません。それまでの育て方の延長上にあり、次の成長の出発でもあるわけです。子どもたちにとって分かりやすい具体的な合図をすることと、チャンスを与え続けること、評価をすることを常に意識することで対応できると考えます。
学校は、そのために少しだけお手伝いします。主役は本人と家族であり、場の中心は各家庭と地域にあります。長い人生の中で味わってきた「幸せな少年時代を過ごすこと」の素晴らしさを私たちはあらためて認識すべきです。

◆参加者アンケート
〇実践された内容や親と学校とのつながり方など、思っていても知る機会がなかなかない内容を分かりやすく教えていただきました。親が動くと学校にも動いてもらえることを頭に置き、まず親が支援を充実させようと思いました。(保護者)
〇具体的な授業の内容を教えていただけて、とても良かったです。支援の仕方や大切さを知ることができました。自分の授業の足りなさを実感し、これからどのようにしていかなければいけないのか、自分自身に問いました。力不足と反省を考えた時間でした。先生のお話に感動しました。どうもありがとうございました。(教育関係者)
〇朝倉先生の実践的な支援はとても現実的で役に立つことばかりでした。先生のご講義を3年間受けることができたことに感謝しています。(福祉サービス事業者)

朝倉先生のこれまでの実践と、溢れる熱い想いを聞くことができ、またまた感動しました。参加されたみなさんと共有できたこと、とても嬉しく思います。
スライド85枚、参考になる写真も沢山見せていただきました。こちらでご紹介できないのが残念です。
今回のついんくる★★講座は、特に教育関係の方に多く参加をいただきました。
沢山のご参加、ありがとうございました。
文責:松尾博子

↑グループワークの軽食は東櫛原町の「OLIO」のサンドウィッチでした